医療的ケア

目次

あいの医療的ケアへの取り組み

NHK首都圏ネット ささえあう命~現代医療の先に医療的ケア

当事業所の取り組みが紹介されました

新聞にも取り上げられた当事業所の医療的ケア

※クリックすると拡大してご覧いただけます。

高齢者住宅新聞(2010.4.5)に介護スタッフの行う医療行為が特集され、当法人の理事長のコメントが掲載されています。

2010年10月26日「私たちの望む医療的ケアフォーラム」に参加

平成24年4月介護職員の吸引実施についての法制化を前に、現場の介護スタッフの現状を当法人の福田が伝えました。
その様子はNHKニュースやラジオ、新聞にも取り上げられました。

医療的ケアマニュアル

当事業所では、医療的ケアを発信しつづけることを目的に、「おうちで医療的ケアー吸引と経管栄養の実践マニュアル」を刊行いたしました。

法改正前の平成23年の話

昨今、慢性疾患の増加、又、国の医療費削減政策などから、病院・施設からの在宅化が進められています。
これは本人家族の在宅指向や在宅医療機器の進歩も後押しし、重症の方の在宅医療の数が増えたということです。
それは「愛する家族と一緒に暮らしたい」という普通の願いであり、とても望ましい事ではありますが、5分おき、10分おきに吸引する21時間介護は家族だけで抱えるには負担が大きすぎます。
また、療養型等社会的人院をしていた老人にとっても在宅という名目のもと、老々介護・老病介護が強いられ悲劇が起きています。
それに難病の方にとっては、尊厳ある生活のため、病院・施設から出て自立を願って、在宅になっても誰かが吸引をしてくれなければ「死」を意味することになってしまいます。

私たちの事業所は設立時の14~15年前から医療的ケアの必要な人の生活を目の当たりにすることによって、自然な心の発露として医療的ケアを行ってきました。
国もこの急速な在宅医療の社会化について、平成15年ALS、16年支援学校、17年在宅においてと、やむを得ぬ処置(違法性の阻却)として…家族以外にも医療的ケアを認めました。
しかし八戸大学の篠崎教授によると、その17年度を境に、医療的ケアを支援してくださったヘルパーが6%から5%に減ってしまったということです。
実際、多くの難病の団体、超重度障がい者の団体がそれぞれ自己ヘルパーを探し、特別支援学校の先生達が医療的ケアの推進運動をおこし、心ある医師の方が研修を開いてくださっているが、やはり増えない、全く広がらない、また、訪問介護事業所における認識度の地域格差が大きいのが現状です。
・・・一体なぜ広がらないのか?いくつかの問題を考えてみたいと思います。

  1. 違法性の阻却の問題
    平成17年度の通達によると、本人やご家族に頼まれて無償で医療的ケアをしてくださる5%のヘルパーに違法性の阻却、つまり「目立たないようにやってください。お金は払わないけど罪は問いませんから」と何を言っているのか解らない説明のもと、(本来、他の人が無償で命を救うために働いてくれたら、それは凄く崇高な行為であり、感謝しても感謝しきれないもののはず)それを「罪を問わない」なんて罪人のような扱いをして・・5%の心優しいヘルパーに対して恥ずかしくないのでしょうか?また、そんな状況を見守っている95%のへルパーが、「やってみよう」と思うでしょうか?
  2. 医療的ケアに医療報酬単価が付いていない
    介護福祉士やヘルパーなど福祉職は、看護師などの医療職と比べるとあまりにも報酬が少ない現状です。
    まして他の業種との比較でも介護職は最も報酬単価が低いと言われています。
    就職難といわれる昨今でさえ就業人口が少なく離職率が高いというのが実情です。
    例えばヘルパーが看護師と同じように入浴介護をし、吸引をした場合、報酬単価は5~10倍の差があります。
    一例を挙げると、ヘルパーが重度訪問介護:1,900円~、身体介護が4,000円で訪問介護するのに対して、看護師は8.500円+初回加算12,000円を含めれば20,500円の訪問看護になります。
    ・・・でもそれ以前に、吸引や経管栄養は医療職にとっては仕事なので報酬が付いていますが、ヘルパーなどの介護職には研修し、認定を受けていても仕事と認めていないので報酬は全くつきません。
    それでも平成22年度4月には、特別養護老人ホームにおいて報酬単価の高い看護師から安い介護福祉士に吸引・経管栄養を行わせることになりました。
    医療的ケアを違法性の阻却として、報酬単価すら払わないでどうして広がっていくのでしょうか?
    どうすれば介護職の方に医療的ケアの支援をしていただけるでしょうか?

医療的ケアが広がるために、医療的ケアが介護職の仕事になるなら、加算が付き保険の保証も付くでしょう。
平成24年度には新しい制度が施行され、研修と医療職との連携のもと、ヘルパーの仕事として医療的ケアが入ってきました。
仕事となれば、医療職と同じように報酬単価が加算という形で当然付くでしょう。

  1. 医療的研修を行ってヘルパーを育てている事業所に対して・・・事業加算
  2. 果敢に医療的ケアに取り組んでいるヘルパー個人に・・・医療的ケア加算

このように加算制度が導入される事を確信しています。

「賃金が払われない仕事などありません」

それが介護職の方の第一歩となるでしょう。
しかし、今現在吸引を必要としている人がたくさんいます。
ヘルパーさん!介護福祉士さん!どうぞ医療的ケアを勉強してください。
私たち介護職は、障がい者の一番身近にいます。
皆さんの優しい心の発露として医療的ケアの支援を行ってください。
このホームページでは、在宅医療で一番必要となる吸引などをなるべくわかりやすく解説しています。
そして平成24年に法改正されましたが、残念なことに今でも違法性の阻却であり、医療的ケアの報酬単価は変わりませんでした。

社会福祉法人あいの樹
福田 美恵

吸引について

吸引とは鼻をかむこと

呼吸をするとき、空気と一緒に目に見えないホコリや細菌を吸い込んでいます。
でも私たちの身体はそれをブロックしたり外に出そうとする働きがあります。
まず、気道の入口である鼻で、毛や粘膜がフィルターとなりブロックします。
でも、入ってしまっても普通は飲み込んで胃に入り、胃酸で溶かされて体の外に排出されます。
胃に行かないで気管に入った時は気道に入った時は気道に流れている分泌液がそれらをキャッチしてたんにします。
そして気管や気管支に生えている細かい毛、線毛によって口や鼻をかんだり、口から出したりします。
障がい者や難病の方は、口や鼻、気管まで上がってきたたんを自分では出せないので、吸引してあげる必要があります。

つまり、吸引とは鼻をかむことなのです。

線毛運動

気管・気管支の粘膜には、線毛とよばれる直径1,000分の1の毛がすきまなく生えていて、たんや異物を口の方へ移動させます。

線毛運動を強めるための対策

たんを出やすくするには、線毛運動を強めるような①姿勢、②運動、③加湿を意識することが重要です。

姿勢

線毛運動を強める姿勢…身体をたてにする
生涯のある人や高齢の人は自力で座って上半身を起こした姿勢を保つことが難しいので、車椅子に座ったり前かがみの座った姿勢をつくるようにします。
寝ている時間が長ければ長いほど死に近づくと言われていますので、なるべく身体を起こしてあげましょう。

①座った姿勢 ②座って上半身を前傾した姿勢

運動(排たんの促進)

①排たんリハビリ 本人の呼吸のリズムで肺が膨らんだり縮んだりするのに合わせて、手のひらを当て介助します。

上部胸郭

鎖骨(さこつ)に中指が触れる位置で。吐くときはお腹に向けて加圧し、吸うときは力を抜きながら頭に向けて手のひらをスライドさせる。

下部胸郭

鳩尾(みぞおち)に親指をあて、手のひらを八の字に置く。吐くときは助骨の下がお腹に入り込むように加圧し、吸うときは力を抜きながら頭に向けて手のひらをスライドさせる。

②体位ドレナージ たんの溜まっている部分を高い位置にした体位をとり、分泌物を移動させる排たん法です。
③その他の方法 軽く揺すったり、振動をあたえたり、手のひらで軽く叩いたりする事も排たんの援助となります
(やさしく、軽くが基本。過刺激にならないよう注意!)

十分な水分摂取、加湿、吸入

乾燥を避けることで線毛運動を助けます。
それでもたんが取れない時は、吸引してあげましょう。

気管切開とは

口や鼻から呼吸しにくい場合、のど仏のしたに手術によって穴を開け、直接気管から肺に空気が入るようにすることです。

気管切開の目的

  1. 気道確保 疾患などで狭くなった気道の確保
  2. 呼吸管理 自発呼吸の無い人や弱い人は人工呼吸器を使用
  3. 誤嚥防止 意識障害や神経筋難病によるたんの排出介助や誤嚥防止

気管切開の種類

  1. 単純気管切開術

    ■メリット:工夫により発生も可能
    ■デメリット:誤嚥のリスク

  2. 喉頭気管分離術

    ■メリット:誤嚥の心配がない、口から食べられる
    ■デメリット:発声ができなくなる

気管カニューレ

気管切開の孔から気管の中まで入れておき、孔が自然に閉じてしまうのを防ぎます。
気管内吸引を行う場合は、このカニューレにカテーテルを挿入し、たんを取ります。
先端部分にやわらかい風船状のものがついたカフつき気管カニューレもあります。

経管栄養とは

経管栄養の必要な人

  • 嚥下ができない人
  • 食べるとむせて(誤嚥)肺炎を繰り返してしまう人
  • 必要とされる栄養量を口から摂取できない人

誤嚥

食べものや唾液が気管から肺に流れ込む現象。
「むせる」ことは気管に入りかかった物を排出しようとする防衛反応です。
※ただし、むせないからといって必ずしも安全ではありません。気道の感覚が低下し、むせる力がない人もいます。

経管栄養の種類

経鼻
経鼻から胃にカテーテルを通し、その管を使って栄養を注入します。

経鼻空腸
経鼻から腸までカテーテルを通し、その管を使って栄養を注入します。

胃ろう
胃に直接穴を開けてカテーテルを通し、管を使って栄養を注入します

腸ろう
腸に穴を開けてカテーテルを通し、その管を使って栄養を注入します。
胃で栄養を吸収できない場合に使われます。

口腔ネラトン

カテーテルを留置せず、注入ごとに口から挿管して胃に栄養を注入します。

※口腔ネラトンの挿入は、看護師か家族にのみ認められています。

経鼻

経管栄養の最初はほとんどの人が経鼻栄養です。
経鼻栄養は手術しないので簡単と思えるかもしれませんが、本人は常に鼻から胃までチューブが通っているのでとても違和感があります。また、チューブの先が胃に入っているのが見えないので、しっかりと確認する事が大切です。

加湿注入前の確認ポイント

カテーテルが今で入っているので、カテーテルの先端が胃の中に確実に入っているか注意してください。
咳込んだり嘔吐反応を起こした時の反動で先端が胃から抜けて気管に入り込んでしまうと命にかかわる事故につながりますので、注入前にカテーテルの位置に異常がないかしっかりと確認しましょう。

※このような異常があるときは、注入を中止して医師やご家族の指示をあおぎましょう。
また、カテーテルの固定がしっかりしているか確認し、印がずれていたら絆創膏で固定し直します。

チューブの先端位置を確認

注射器で空気を注入し、胃の音を聞く

胃残の確認

確認内容は「おうちで医療的ケアー吸引と経管栄養の実践マニュアル」のP.55の表を参考に対応を検討

看護師さんによる位置確認済みか確かめましょう。
また、留守介護の時は出掛けられる前にご家族に確認していただきましょう。

胃ろう

胃ろうとは、胃壁と腹壁に穴を開け、直接胃に栄養を入れるので、第二の口と呼ばれます

胃ろうを造設する理由

  • 呑み込む機能が低下している
  • 食べるとむせて(誤嚥)肺炎を繰り返す
  • 鼻から栄養チューブが入らない
  • 胃食道逆流現象P.55
  • 食道裂孔ヘルニアP.55

など、さまざまなケースがあります。
いずれも、生命を維持していくために水分や栄養が不十分になる場合に造設します。
手術は必要ですが、経鼻・経口とちがい咽頭・食道へのチューブ留置がないので、チューブが気管に入り込む心配がなく安全です。

胃ろうの種類と構造

胃ろうにはボタン型とカテーテル型があり、先端にバルーンと呼ばれる風船が付いているものと、バンパーと呼ばれる留め具の付いているものがあります。

腸ろう

腸ろうは直接腸内へ栄養を注入するので、ゆっくりと栄養を注入しなくてはなりません。
また留置したカテーテルも抜けやすいので、慎重な操作が必要です。

腸ろうの知識

腸ろうは、手術によって腸に孔をあけ、そこにカテーテルが10~15cmくらい挿入されているだけなので、胃ろうのようにバルーンで止まっておらず裏側から絆創膏で固定してあるのみとなります。固定がきちんとされていないと簡単に抜けてしまう上、抜けてしまうと腸ろうの孔が簡単にふさがってしまいます。固定状況を確認することが重要であると同時に、絶対に抜けないよう最新の注意が必要です。抜けたこきはすぐドクターに連絡してください。

腸ろうは直接腸内に栄養を入れるので、ゆっくり入れないと痛みがおきたり、ダンピング症候群になります。

速度に注意

ダンピング症候群

特に急激に栄養剤を注入したときに注入後30分頃におこる症状で、低血糖に伴う全身倦怠感、めまい、冷や汗、動機、眠気などの全身症状や、下腹部の不快感、腹痛、嘔吐、下痢などの腹部症状などがあります。
腸内に注入するときはポンプを使ってゆっくりと時間をかけて注入する必要があります。

腸ろうの注意点

抜けやすいカテーテルの固定の仕方

腸ろうの場合、注入用のカテーテルはろう孔に刺さっているだけなので、簡単に抜けてしまいます。
カテーテルの位置がずれないように印が付いていますので、位置を確認しましょう。

  1. カテーテルは出口の部分を絆創膏で固定し、
  2. 残りのカテーテルを巻いて
  3. 上から絆創膏で貼り付けます。

もしチューブが引っ張られても、巻いてある部分がほどけて、ろう孔からカテーテルが抜けるのを防ぎます。

速度に注意(カンガルーポンプ使用)

腸ろうは食道や胃を通らないので、成分栄養剤などの完全消化されたものを時間をかけゆくりとカンガルーポンプで注入します。

吸引の注意事項

適切な吸引圧

吸引圧は一応基準として20-25kPa程度に調整します。
低すぎると短時間での吸引が困難となり、高すぎると粘膜を傷つける恐れがありますので、特に注意してください。
※たんの様子を見て、吸引圧を上げ短時間で吸引する場合もあります。
カテーテルをゆっくりと回転させながら引き出す
一ヶ所に圧力がかからないように回転させます。

吸引圧力の変化に注意

カテーテルの先端が粘膜に吸い付くと、吸引圧が上がります。
そのままでは粘膜を傷つけてしまうので、カテーテルを折り曲げて圧を下げ吸引するのをやめてください。

感染予防への留意

使用が終わった手袋は他者への感染などを避けるため必ずすて、よく手洗いしましょう。

カテーテルを消毒液に浸す

気管内吸引はより厳重な衛生管理が必要です。
カテーテルの保管容器に入れる消毒液は、エタノールやミルトンを使用します。

感染予防への留意

滅菌の手袋を用意しておき、処置後にすてます。
滅菌したピンセットを使用することもあります。
ピンセットの操作が難しい場合は滅菌手袋を使用してください。
吸引はたんや唾液の飛沫を受けることもあるので必ずマスクを着用しましょう。

ヘルパーさんは力ニューレ内部のみを吸引

カニューレ内部の吸引は気管の粘膜を傷つける心配はないので、吸引圧力(10~20kPa)をかけたままカテーテルを挿入しても大丈夫です。

吸引時間は短く

吸引時間が長いと気道内の酸素を吸引することになり、無酸素状態を招きやすくなります。
パルスオキシメーターで血中酸素飽和度の監視をしっかりとおこないましょう。

用具を清潔に

使用が終わったカテーテルや機器は、水を吸弓|してきちんと洗浄します。
次回の吸引時すぐに使えるよう清潔に保ちましょう。
吸引瓶、容器の水も毎日交換・洗浄します。
カテーテルは汚れが無くても必要に応じて交換(使い捨て)しましょう。

カテーテルを間違えない

口鼻腔吸引用と気管吸引用のカテーテルは分けて取扱い、間違えて使わないよう注意しましょう。

経管栄養の注意事項

経管栄養の注意事項

栄養剤は人肌で

栄養剤は食道を通らずに直接胃や腸に入るので、注入前に体温程度に温めておきましょう。

注入前の胃残確認

異常のある場合、内容物の状態を表を参考に、対応を検討してください。

胃の内容物の状態 予想される状態
空腹のはずなのに栄養剤や胃液が多量に引けてくる 消化されていない
褐色の液が引かれる
(血液は胃酸と反応して褐色になる)
胃から出血、または逆流性食道炎による食道からの出血の可能性
黄色の液が引ける
(胆汁が胃に逆流している)
腸の調子が悪い
空気が多量に引ける
(空気を多量に飲み込んでいる)
引けるだけ引いておく。
いつもより多いときは体調不良の可能性も
留置の場合で、無限に空気が引けてくる チューブが口の中まで抜けてきている可能性も
腹部が張っているのに何も出てこない 姿勢を変えて引く
(液や空気がかなり出てくることもある)

上記のような異常があるときは、①注入の量を減らす、②注入の内容を変更(ソリタ水など)する、③注入時刻を遅らせる、④注入を中止するなどの対応を考えなくてはいけませんが、あらかじめご家族やドクターに方針を確認しておき、カンファレンスで話し合っておく必要があります。

胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう・GER)

胃食道逆流症とは、胃の中の物が食道へ逆流することでおこる症状ですが、胃から食道への逆流は健常者でもおこります。
しかし、逆流がひんぱんにおこると胃の消化液で食道が炎症をおこしたり、逆流した物が気管に入り誤嚥をおこします。
関連した症状として嘔吐や吐血、はんすう運動、喘息や喘鳴、急性の呼吸不全ですが、胃食道逆流症と誤嚥により肺炎を繰り返す時があります。
食道への逆流は食道下部括約筋(しょくどうかぶかつやくきん)がうまく働かないことや、閉塞呼吸での腹圧上昇で起こると考えられていますが、横隔膜靭帯(おうかくまくじんたい)が弱くなり胃が胸腔内に脱出(食道裂孔ヘルニア)することで、脱出した部分が圧迫され逆流が助長される場合もあります。

胃食道逆流症で起こる症状

  • 消化器症状 嘔吐、吐血、逆流性胃食道炎
  • 呼吸器症状 肺炎、喘鳴、咳嗽発作
  • 栄養障害 体重増加、貧血、低蛋白血症

注入速度

注入速度には個人差があります。医師やご家族の指示を仰ぎましょう。

最後に白湯を通す時の温度(腸ろうは特に注意)

白湯は胃や腸に直接注入されますので、体温と同じにしてください。
間違っても熱いままや冷たい水を入れないように注意してください。
熱湯を入れた場合死亡する危険があり、冷水は下痢を起こすことがありますので特に注意しましょう。

注入中や注入後は安静に

注入中やその直後はあまり身体を動かさないよう注意しましょう。
経管栄養は「食事」です。
食事中や食事直後に激しく身体を動かすと、腹痛を起こしたり食べ物が出てきそうな感覚になりますが、それは経管栄養の人も同じ。
また、固形物である食事よりも液体の注入物の方が吐きやすい(逆流しやすい)ことも覚えておきましょう。

用具を清潔に

仕様が終わった栄養チューブやボトルは水を通してきちんと洗浄します。
洗った後は消毒液(80倍希釈のミルトン)に1時間浸けて消毒します。

重症心身障がい児・者の理解のために

超重症児(者)・準超重症児(者)の判定基準

東京都立養護学校教諭 下川和洋

  1. 支援の必要な「重症心身障害児・者」とはどんな障害でしょうか。その基本となる障害像について、知っておきましょう。
  2. 「重症心身障害児」という言葉は、「1959(昭和34)年に、当時渋谷日赤病院の小児科部長として勤務していた小林提樹氏のグループが使いだした造語」です。現在「重症心身障害児」の定義として「大島の分類」が用いられています。この表では、重度の知的障害と身体障害をあわせもつ番号1から4を「重症心身障害児」と呼びます。当初、児童が中心でしたが、成人も含めて「重症心身障害児・者」と表記する場合があります。

この「重症心身障害児・者」は重度の知的障害と身体障害をあわせもつ状態ですが、その他に、筋肉の緊張が強かったり逆に弱かったり、脊椎の側湾や胸郭などの変形、関節の拘縮、脱臼や骨折しやすい、呼吸障害・摂食嚥下障害・消化管に障害がある、排泄障害、体温調節不良、感染症にかかりやすい、昼夜逆転するなど生活のリズムが不安定、てんかんがあるなど、さまざまな合併症があります。

「重症心身障害児・者」の数は、施設入所者で約12,800人、在宅生活者で約24,700人、総数が約37.500人と推定されています。
このように、「重症心身障害児・者」の2/3は在宅で過ごしていると考えられています。

障害者自立支援法による障害程度区分

「障害者自立支援法」は、障害者や障害児の自立した日常生活や社会生活を可能にするために、福祉の仕組みや障害福祉サービスなどを定めている法律です。
その障害福祉サービスの支援の程度を明らかにするために、「障害程度区分」が設けられています。

障害程度区分を判定する調査

A項目群(麻痩・拘縮、移動、複雑操作、特別介護、身の回り、意思疎通、行動、特別な医療)
B項目群(日常生活に関する項目)
B2項目群(多動やこだわりに関する項目)
C項目群(精神面や行動障害に関する項目)
※各項目の区分程度は1~6区分で、区分6が最も介護に要する時間が多い

支給決定までの手順

申請→認定調査→医師意見書→一次判定(コンピュータ判定)→審査会(二次判定)→障害程度区分の認定→認定結果通知→サービス利用意向聴取支給決定案の作成→ 支給決定通知

認定調査は、家庭あるいは通所(または入所)施設へ調査員が訪問して聞き取ります。
福祉障害サービスは、介護保険の要介護認定基準に基づく[介護給付]評価して設定されています。

医療的ケアを必要とする人たちの障害像

医療的ケアを必要とする人々とは、知的障害や運動障害ではなく、「超重症児」で導入された医療的な介護ニードのある方を表現しています。
しかし、医療的ケアが必要であっても、必ずしも「重症心身障害児・者」や「超重症児」のように重い障害のある方ばかりではありません。
例えば鈴木美香子氏は、全く肢体不自由の無い、気管切開したダウン症の子供の保護者として就学時の課題を紹介しています。
筆者も通常学校に通学する二分脊椎児の導尿の対応や、意思伝達装置の使用を指導した知的障害をともなわない気管切開をしている幼児の保育園入園問題を報告しています。
以上のように医療的ケアを必要とする人々は、医療的な介護ニーズという共通点はありますが、障害像は多様であることが分かります。

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